毎年、新米が出回る季節になると「今年の新米はおいしいね」という声が聞こえてきます。 その一方で、「思ったより柔らかい」「去年と少し違う気がする」という相談も、実はよくあります。
その理由のほとんどは、じつは“水加減”。 新米は、お米の状態がとても良いぶん、ほんの少しの水量の違いで味も食感もが変わります。
ここでは、農家の目線で「新米のおいしさを引き出す水加減のコツ」を、やさしくまとめました。 今日からすぐ実践できる内容なので、ぜひ参考にしてみてください。

■ なぜ新米は水加減で味が変わるのか?
新米には水分が多く残っているため、 同じ品種でも「新米」と「古米」では炊き上がりの食感が違います。
そのため、新米は水を吸いやすく、 いつも通りの水量で炊くとやわらかめに仕上がりやすいんです。
お米そのものはとても良い状態なのに、 炊き方ひとつで「なんだかベチャっとしたな…」という印象になることもあります。
■ 基本は“いつもの水より少しだけ少なめ”が合う
農家の感覚として言うと、 「炊飯器のメモリ −5%」 これが最初の目安になります。
具体的には、大さじ1弱ほど水を減らすだけで十分です。 これだけで、粒立ちが良くなり、噛むほどに甘みが出てくる炊き上がりになります。
もちろん好みもありますが、 「新米はやわらかくなりやすい」という特徴だけ覚えておくと、ずっと失敗しません。
■ 品種によっても“ちょうどいい水加減”が違う
じつは、お米の品種によっても水加減の相性があります。
例えば、私が育てているまっしぐらは、粒がしっかりしていて水分を含みやすいため、 水を少し控えめにすると、とてもきれいな炊き上がりになります。
はれわたりは、香りが良くて口当たりがやさしいタイプなので、 こちらもやや控えめの水量で炊くと、粒立ちが生きてくる印象です。
同じ「新米」でも、品種によってちょっとしたクセがあるので、 最初の1回だけ炊き比べをしてみると、ご家庭の炊飯器との相性が見えます。
■ よくある“新米の炊き方の失敗”
新米の相談を受けると、よく次のような失敗が見られます。
- 水を大きく減らしすぎてしまう
- 無洗米と通常米を同じ水量で炊いてしまう
- お米を研ぎすぎて粒が割れ、やわらかくなりすぎる
- 冬場の冷たい水で吸水が遅れ、芯が残る
どれも“ちょっと気をつけるだけ”で防げます。 特に、新米だからといって思い切り水を減らしてしまうと、 逆に硬くなったりパサつくことがあります。
■ 新米を一番おいしく楽しむために
最初の1回だけ、 「いつもの水量」と「−5%の水量」 この2つを比べてみてください。
これで、ご家庭の炊飯器 × 新米の組み合わせの“ベスト水加減”がほぼ決まります。
いったん最適値がわかれば、あとは毎日ふつうに炊くだけで、 新米のおいしさを長く楽しめます。

■ まとめ
新米は、お米が持つ本来の旨みを一番感じられる時期です。 だからこそ、水加減を少しだけ見直すと、おいしさがぐっと引き立ちます。
難しいことは何もなく、たった大さじ1弱の調整だけ。 それで粒の立ち方や香りが変わるのが、新米のおもしろさでもあります。
今年の新米も、ぜひ一番おいしい炊き方で楽しんでくださいね。